ひろげた両手に

目があうと、 私めがけて両手を広げる。 私も同じ高さになるようにしゃがむ。 両手は私の首にまわる。 私は立ち上がって優しくリズムよく、小さな背中に触れる。 ぎゅっと力のこもった両手は次第に力が抜けて 同じように私の背中に優しく触れる。 抱きしめて…

洗濯物と風。

今日だった。 込み上げてどうしようもなくなって、上を向いても仕方なくって。 唇を噛んでも溢れてきたのは実感だった。 今日の昼下がり、ご飯を終えて小さな洋服たちを正座して畳んでいた。 風がふわっと吹いて気持ちがよくって、『いい1日をみんな過ごし…

手触りとか、温度とか。

心地良い。 「心地良い」が心地良くなったのは25歳を過ぎた頃だったように思う。 18の頃なんかは刺激的なものや熱いものを好んで選んでいた。 尖っていたり、熱を帯びているものはそれだけで魅力的に写っていた。 だから、田舎が嫌だった。 狭くてぬるくて単…

急がば休め!

私は読書が好きで、仕事の休憩時間は大体どこかでコーヒーを飲みながら本を読んでいる。西加奈子がおもしろくてリズム良く読めるばかりに時間を忘れて没頭し、気がつけば休憩終了5分前。 「くそう、憎いぜ。西加奈子。いい日本語使いやがる、愛してる」とか…

イビったれてんなよ!

新宿駅の角にある花屋さんの前に立ち尽くしていた。 花が、ピンクや黄色、淡い色をした花たちが今日も優しく咲いていて涙が出そうだった。 イヤホンは耳につけているが、音楽は流れていない。 店員さんと男性が花束を相談しながら作っている。 「この淡いピ…

しょっぱいなんて生ぬるい。

6年が経った。 6年前は香川県にいて、気の合う友達と瀬戸内海を眺めながらドライブしてた。 友達が仕事が始まるのが19時だったから、仕事先まで送り届けて帰宅したのが19時半。 珍しく、父が家にいて居間でテレビを観ていた。 父はアクション系の映画が好き…

願わくは私に声援を

その人は、晴れた日の窓に背を向けて座っていた。 畳に正座して話していたのはスポーツ選手のセカンドキャリアの問題について。 スポーツばかりをしてきた選手たちは引退後の食いブチに困るのだと、それはプロに限らず、スポーツを中心に生活をしてきた大学…

31日

2月1日である。2017年が始まってひと月が経ったということがこの数字から見て取れる。 しかし、この一ヶ月。2017年が始まって31日。私にとってはとても長かった。 帰省していたので実家で母と紅白を観ながらワインを開けて、そのうち弟カップルが帰ってきて…

完了しない涙

人が一人死んだことがもたらす影響は大きい。 昨年、11月に祖父が死んだ。 私が18の頃に祖父にガンが見つかった。それを告げられた後、一人になって私はおいおい泣いた。 不安で押しつぶされそうだった。 「おじいちゃん、おらんなったらどうしよう」 そこか…

傷には軟膏

傷をすべてみせた人がいた。20歳の夏だった。 膿んでて腫れていてぐじゅぐじゅで異臭だってしたかもしれない私のそれをみて、そのひとつひとつに軟膏を塗ってくれた人がいた。今までに何度か、自分で自分を終えようと考えていたことがあった。その何度目かの…

今晩空いてる?

「今日の夜空いてる?」ポンとiPhoneが光る。引っ越して4ヶ月が経つ。 こっちで出会った友達、今晩の予定を聞いてくる。生憎今日は仕事。 夕飯に誘おうと思って私に連絡をくれたよう。 すごく普通のやりとり、当たり前。 地元で25年過ごした私、 故郷では…

楽しみのひとつ

良い出会いとか、出会いに感謝!とかってよく言うけど、 時々、 すごい出会いだな なんて感じることがある。 親友のみーちゃんに会った時は本当に震えた。 冗談でなく、震えた。 顔をみたときに【会いたかった】【待っていた】【彼女に会うためにずっと耐え…

孤独の代替品

壊れたiPhoneの代わりにショップが代替機を貸してくれた。 前に使っていたものより1つ新しいもの。 SIMカード入れてPCに繋いだらホーム画面まで前のままになる。 大きさも重さも変わらない、画面も情報も変わらない。 1つ新しくなって少し表示が違うくらい…

お腹をあたためてくれるもの

うれしいこと。褒めてもらえたり、仲良くなりたかったよって言ってもらえたり、好きだよって言ってもらえたり、 うれしいことってたくさん。 毎日、毎日に落ちている。降ってくる。 何よりもうれしいこと。 人と仲良くなること。 最初は表情も言葉も少ない。…

鉄壁

悲しいことがあった。そんなとき、自信をなくしたりする。嫌なところばかりみえてしまう。 欠点を探しに行こうとする。でも、元気をくれるものってある。 香りの良いコーヒー、あったかいお風呂。 あとは、言葉。昔、ともだちや兄弟、同僚からもらった私を褒…

さいしょのさいしょ。

子供の頃、好きだったのは空想だった。嫌なことが起きてる最中でも空想の世界に飛べば現実が空想にひっくり返った。 母親のヒステリックな叫びも聞こえなくなるほど思考に没頭できた。 そして私は感受性に恵まれ気分屋だった。 怒ったりご機嫌になったりとく…