手触りとか、温度とか。
心地良い。
「心地良い」が心地良くなったのは25歳を過ぎた頃だったように思う。
18の頃なんかは刺激的なものや熱いものを好んで選んでいた。
尖っていたり、熱を帯びているものはそれだけで魅力的に写っていた。
だから、田舎が嫌だった。
狭くてぬるくて単調な、そういう田舎が退屈に思えた。
平凡な田舎で歳をとった。
服屋さんで働いて、
晴れた日には公園でピクニックをして、
友達と夜中にドライブをして、
うどん屋さんで働いてる心根の優しい男の子と付き合って、
時々誰かとケンカして、
ライオン通りをはしごして朝まで飲んで、
雨が降ったら車の中でセックスをして、
気に入りの古びた喫茶店でコーヒーを飲んで、
瀬戸内に浮かぶ島々に美術を見つけに行って、
傷ついては泣いて。
平凡な田舎で歳をとった。
歳をとる中で好きになることが得意になった。
許せることも多くなった。
刺激の強いものは痺れてしまうかもしれないし、
熱いものはやけどをしてしまうかもしれない。
でも心地の良いものには攻撃性がない。
誰も傷つけようとせず、
「気持ち良い」とはまた違う、それを好むようになった。
私と何かの間には「心地良い」があってほしいと思うようになった。
「心地良い」時間。
「心地良い」場所。
「心地良い」空間。
それがあればいいと願うようになった。
それを見つけたいと思うようになった。
平凡でもいい、退屈でもいいし、普通でもいい。
「心地良い」を今日もあなたと共有したい。